池田の英語学習理論
池田和弘が、最先端のものを中心に、様々な英語理論を語ります。
言語学や脳の情報処理の観点から、
効果的に学習できる方法などをご紹介します。
池田和弘が、最先端のものを中心に、様々な英語理論を語ります。
言語学や脳の情報処理の観点から、
効果的に学習できる方法などをご紹介します。
2014年6月15日
一般にはあまり知られていないが、
人間の脳は(一般の)コンピュータとは異なった働きをしている。
何が違うかというと、情報の処理の仕方が違うのであるーーーそれも、根本的に。
まずコンピュータは、直列処理というものを行っている。
これは、簡単にいうと「1+1」が「2」となる情報処理の仕方で、
プログラムつまり「ルール」通りに計算を行う。
ところが、人間の脳は並列分散処理を行っている(※)。
この場合には、「1+1」が「2」になることもあり、
条件によっては「2.5」さらには「3」になることもある。
つまり、必ずしもルールに従って働くわけではないのである。
―――このように言うと、何か思い当たる点がないだろうか。
そう、脳がこのような働き方をするからこそ、
人間は「創造」することができるのである。
たとえば、「芸術」などというものを生み出すことができるのも、
そのおかげなのである。
大きく言って、情報処理にはこの2種類しかない。
つまり、「コンピュータ型」と「人間型」である。
さて、言葉の勉強というのはある種の「情報処理」といえるが、
これまでの英語教育というのは、
上の2種類のどちらを原理としてきたのだろうか。
―――答えは、「コンピュータ型」である。
もうお分かりだろうか。
私たちは人間だ。
それにたいして、「コンピュータ型」の学習方法が取られてきたのである。
無理や無駄が起こらないはずがない。
(※)人によっては、頭に「超」を付ける人がいる。
これは簡単にいうと、人間には真似ができない、
つまり「作れない」「複製できない」という意味である。
そのぐらい人間の脳の働きは複雑なのだ。
2014年4月8日
★特に英語関係者向けに記述したものです。
「英語にはルールがある。だから、そのルールについて勉強し、使えるように演習をしないと、英語は使えるようにはならない」
―――これがこれまでの英語学習法の根本にあった考え方です。
しかし、現在、この考え方を根底からくつがえす、「英語学習革命」とでも呼ぶべき教え方が少しずつ広がりつつあります。
その教え方では、「ルールを学ばなくても、ルールは習得され、使えるようになる」と考えます。
つまり、180度の発想転換です。 コペルニクス的転換といっても良いでしょう。
このような英語学習方法では、「文法の障壁」が無いため、英語の学びやすさが劇的に変わり、文字通り、だれでも気軽に英語の世界に入っていくことができます。
さらに、これまではせっかく苦労して文法を学び、大学入試に合格しても、実用英語のためにまた一から英語を学び直す必要がありましたが、この方法で学ぶと、身に付けた英語がそのまま「使える英語」になっていきます。
つまり、これまで半世紀以上にわたって「受験英語」と「実用英語」を分断してきた“垣根”が無くなるのです。
夢のような話ですが、私は実際にこの考え方にもとづく指導体系を開発し、大学受験予備校、つまり“受験英語の総本山”で10年間にわたって実践した経験があります。
予備校というところは、大変厳しいところで、生徒へのアンケート結果が悪いと、早い人は1年(通常の契約期間)を待たず、半年でクビになります。
そんなところで、上位レベルから下位レベルまであらゆる層の生徒を10年間にわたって教えたのです。
皮肉なことに、ある大手予備校で文法講座を持ったときなどは、150人は入ろうかという大教室で生徒があふれたことがありました。
文法を教えず、四択問題さえまともに解かせない授業であったにもかかわらず。
この教え方のベースになっている理論は、並列分散処理(parallel distributed processing)という情報理論です。
これにたいして、従来の教え方は直列処理(serial processing)という情報理論にもとづいていて、両者は対極にあります。
直列処理はコンピュータに使われていますが、並列分散処理は人間の脳の働きを模した理論です。
英語を学習するのは人間ですので、当然ながら並列分散処理にもとづく学習方法の方が、はるかに学ぶのがやさしく、高い効果を発揮します。
一般に「英語嫌い」が生まれる原因は、文法です。とくに高校生になると文法は無闇に複雑化するため、多くの生徒が脱落します。しかし、並列分散処理の考え方を応用した学習方法では、文法を教えないため、英語を学ぶハードルが著しく低下します(※)。
このため、それまで英語で苦しんでいた生徒が、突然目覚めて、偏差値45辺りからあっという間に60を越えるというようなケースが続出します。私が対面で受験生を教えたのは、今のところ、2012年3月に送り出した生徒が最後でしたが、このときには、センター試験100点程度で低迷していたふたりの生徒を、それぞれ早稲田大の文学部と大阪市立大の工学部に合格させています。
(※)学ぶべきことが完全に“ゼロ”になる訳ではありませんが、これまでの文法に比べると、100分の1以下の分量しかありません。
2014年3月8日
言葉には規則がある、だから規則について学んで、それを練習することが必要だ・・・私たちはこう信じてきました。
ところが、新しい文法③でも触れたように、いざ私たちが、日本語の勉強で苦労している外国人からアドバイスを求められると、私たちは決して「国文法を学びなさい」とは言わないわけです。
―――ヘンですね。どうしてこんな矛盾が生まれるのでしょうか。
ここには深い理由がありますが、ごく簡単に言うとつぎのようになります。
「言葉には規則がある、だから言葉を丸ごと吸収していくと、規則もいっしょに吸収される」
つまり、言葉を吸収していくと、無意識のうちにそこに含まれる規則も吸収されていくというわけです。
このような文法の考え方を「エマージェント・グラマー」(Emergent Grammar)といいます。
最新の文法なので、まだ日本語になってさえいません。
実際の学習では、文法の勉強をまったくゼロにすると、かなり効率が悪くなります。
そこで、私は、説明の不要な点を少しずつ削り落とし、「これだけは絶対」という部分だけを残していったのです。