池田の英語学習理論
池田和弘が、最先端のものを中心に、様々な英語理論を語ります。
言語学や脳の情報処理の観点から、
効果的に学習できる方法などをご紹介します。
池田和弘が、最先端のものを中心に、様々な英語理論を語ります。
言語学や脳の情報処理の観点から、
効果的に学習できる方法などをご紹介します。
2015年6月4日
前回お話したように、英単語というのは、
①つづり、②音声、③意味から成るのですが、
このうちもっとも難しい③については、
私たちは母語である日本語を使って、「すでに」理解しています。
あとは、①と②だけの話なので、どうということはないという話になるのです。
しかし、これだけで、たとえば、単語を羅列したノートを作れば
覚えることができかというとそうはいきません。
人間は、コンピュータと違って個々バラバラの情報を覚えるのが
とても苦手だからです。
たとえば、コンピュータは461098437とかいった数字の羅列を
一瞬で覚えてしまいますが、人間はこういった記憶がとても苦手です。
ところが、「つながり合った情報」、たとえば、映画やドラマなどになると
人間の脳は驚くべき能力を発揮します。
だいたい映画は2時間で2Gぐらいの情報があり、これは文字数にするとなんと10億文字、
本にすると130冊分になりますが、名作などであると大抵の人は、
たった1回観ただけでセリフや背景や音楽など、細部にわたるまで覚えてしまうものです。
人間の脳は、「つながり合った情報」を記憶するのが非常に得意で、
この能力を活用すれば、500語や1000語ぐらいの単語はアッと言う間に頭に入ります。
そこで、和文の中に英単語を入れ込んでしまう訳です。
これを左において、右側に単語リストを作り、文脈を確認しながら、
単語リストで軽くテストするようにします。
――― なぜ、英文を使わないのか?
英文と和文とを比べてあなたはどちらが頭に残りやすいですか。
「意味のつながり」が、強烈に、鮮明に頭に残らないと単語を超高速で、
確実に覚えることはできません。
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2015年4月27日
英単語は爆発的に増やせます。
そして、英単語が爆発的に増えると、(当たり前のことですが)
英語は格段にやさしく見えるようになります。
さて、ではどのような方法で増やすのかというと、先日、
産経新聞の全国版でも紹介されましたが、和文脈を利用するのです。
“和文脈をうまく利用すると、ごく普通の人でも100語/週なら簡単に、
150語/週でも少し頑張ればそれほど苦労せずに覚えることができます。
150語/週というと、ひと月にすると600語/月にもなりますが、
この程度はだれでも覚えることができます。
つまり、上位の大学に通るのに必要な6000語ぐらいであれば、
10か月もあれば余裕で頭に入ってしまうという事です。
そもそも、英単語というのは、①つづりと②音声と、③意味から
なっていますが、このうちもっとも難しいのは③の「意味」です。
「意味」というものは、幼いころからのあらゆる積み重ねがあって、
はじめて理解することができるようになるもので、
つづりのように機械的に20回あるいは30回書けば
それで覚えられるというものではありません。
日常生活や学校生活などにおける経験や学習を通じ、
また趣味などを通じ、幅広い“学習”を行って
はじめて、理解されるものです。
ところが、私たちは日本語による学習を通じて、
このステップをすでに踏み終わっています。
たとえば、「ドクター」というのがどういう職業の人で
どんなことをする人だかとか、「メディア(媒体)」というものが
どんなものでどんな働きをするとか、そういったことを
「すべて」+「すでに」知っているのです。
そうなると、あとは①つづりと②音声を覚えれば
終わりということになりますが、これらについては
それなりに適切なトレーニングをすると、
莫大な経験を積まなくてもだれでも身に付きます。
2015年3月23日
今の中学・高校の英語学習カリキュラムの最大の問題点は何かと言うと、
それはもちろん、旧態然たる文法学習と文法演習なのですが、
もうひとつ大きな問題点があります。
そこさえクリアーすれば、文法の学習はかなり楽になるのですが、
その発想転換がかなり難しいのか、
それとも公的な教育機関では実施が難しいのか、
私自身は実践されている例を聞いたことがありません。
その問題点とは、「縦割り」のカリキュラムです。
つまり、文法は文法の時間に、
リーディングはリーディングの時間に・・・という発想です。
この「縦割り」の発想は、
とくに文法の学習にかなり大きなマイナスとなります。
なぜなら、文法の学習と言っても、
じつは「覚えないといけない事」がたくさんあるからです。
たとえば、中学校では、ほんの2週間から3週間の間に
動詞の変化を全部覚えないといけません。
カリキュラムがそうなっているからです。
しかし、これには明らかに無理があります。
人間の頭は、コンピュータのように「入れる=記憶される」
というようには出来ていません。
そのため、このようなカリキュラムに「耐える」ことができるのは、
そういった、ある意味で無茶な学習に適応できる生徒だけ
ということになります。
その結果どうなるかというと、
「動詞の変化表」を覚えきれない生徒が続出し、
致命的なハンディとなって後々まで悪影響を及ぼします。
この問題の解決法は意外と簡単で、
ようは短期間に無理に知識を詰め込まず、
重要な点については英語の各授業に分散させ、
中学の1年辺りから少しずつ、
何度も何度も繰り返しトレーニングしていけば良いのです。
つまり、「横割りのカリキュラム」にすれば良いのです。
このカリキュラムにはもうひとつの利点があって、
それは授業にメリハリがつくということです。
昨今は、生徒たちの集中力の続く時間が
どんどんと短くなっているといいます。
本当のところは私には分かりませんが、
これをスマートフォンや携帯の影響であるという特集が、
ニューズウィークの日本語版にありました。
このような事情にあって、カリキュラムを横割りにし、
まったく異なる学習を挟み込むと、生徒の気分も変わり、
授業の質自体が自動的に向上することが期待できます。
たとえば、大学の一般的な授業時間である90分というのは、
地獄のように長いですが、4種類ぐらいの学習を組み込むと、
あっと言う間に終わります。
――― 生徒だけでなく、講師にとっても。
中学・高校の授業時間は、これよりはるかに短いので、
たとえば50分授業で「横割りのカリキュラム」を
実施することは難しいかも知れません。
しかし、何らかの方法で情報を分散し、重要な項目については、
軽く何度も繰り返し学習できるように工夫をすると、
学習効果はまるで違ってきます。
最近は、公立の学校でも、
中高一貫の教育が行われ始めていますが、
そのようなケースでは、6年間にわたって情報を分散できるため、
非常に強力なカリキュラムを組み立てることができます。
(研究発表)
「時系列に沿った情報の分散による低負荷の文法指導方略について」
(2011) 大学英語教育学会