横割りのカリキュラム

2015年3月23日

今の中学・高校の英語学習カリキュラムの最大の問題点は何かと言うと、

それはもちろん、旧態然たる文法学習と文法演習なのですが、

もうひとつ大きな問題点があります。

 

そこさえクリアーすれば、文法の学習はかなり楽になるのですが、

その発想転換がかなり難しいのか、

それとも公的な教育機関では実施が難しいのか、

私自身は実践されている例を聞いたことがありません。

 

その問題点とは、「縦割り」のカリキュラムです。

 

つまり、文法は文法の時間に、

リーディングはリーディングの時間に・・・という発想です。

 

この「縦割り」の発想は、

とくに文法の学習にかなり大きなマイナスとなります。

なぜなら、文法の学習と言っても、

じつは「覚えないといけない事」がたくさんあるからです。

たとえば、中学校では、ほんの2週間から3週間の間に

動詞の変化を全部覚えないといけません。

カリキュラムがそうなっているからです。

 

しかし、これには明らかに無理があります。

人間の頭は、コンピュータのように「入れる=記憶される」

というようには出来ていません。

 

そのため、このようなカリキュラムに「耐える」ことができるのは、

そういった、ある意味で無茶な学習に適応できる生徒だけ

ということになります。

その結果どうなるかというと、

「動詞の変化表」を覚えきれない生徒が続出し、

致命的なハンディとなって後々まで悪影響を及ぼします。

 

この問題の解決法は意外と簡単で、

ようは短期間に無理に知識を詰め込まず、

重要な点については英語の各授業に分散させ、

中学の1年辺りから少しずつ、

何度も何度も繰り返しトレーニングしていけば良いのです。

 

つまり、「横割りのカリキュラム」にすれば良いのです。

 

このカリキュラムにはもうひとつの利点があって、

それは授業にメリハリがつくということです。

 

昨今は、生徒たちの集中力の続く時間が

どんどんと短くなっているといいます。

本当のところは私には分かりませんが、

これをスマートフォンや携帯の影響であるという特集が、

ニューズウィークの日本語版にありました。

 

このような事情にあって、カリキュラムを横割りにし、

まったく異なる学習を挟み込むと、生徒の気分も変わり、

授業の質自体が自動的に向上することが期待できます。

 

たとえば、大学の一般的な授業時間である90分というのは、

地獄のように長いですが、4種類ぐらいの学習を組み込むと、

あっと言う間に終わります。

――― 生徒だけでなく、講師にとっても。

 

中学・高校の授業時間は、これよりはるかに短いので、

たとえば50分授業で「横割りのカリキュラム」を

実施することは難しいかも知れません。

しかし、何らかの方法で情報を分散し、重要な項目については、

軽く何度も繰り返し学習できるように工夫をすると、

学習効果はまるで違ってきます。

 

最近は、公立の学校でも、

中高一貫の教育が行われ始めていますが、

そのようなケースでは、6年間にわたって情報を分散できるため、

非常に強力なカリキュラムを組み立てることができます。

 

(研究発表)

「時系列に沿った情報の分散による低負荷の文法指導方略について」

(2011) 大学英語教育学会