英語の学習法と文法(2) 

2014年8月26日

話を戻すが、コミュニカティブ・アプローチの優れている点は

「文法を教えない」という点に加えて、あと2点ある。

 

そのひとつは、「情報の格差を埋める」という発想である。

 

これは、並列分散処理的な発想でもあり、スピーキングのみならず、

リーディングなど、他の能力の養成にも応用できる考え方である。

 

もう一つは、これに関連して、「自然な集中状態」が起こるということである。

 

じつは、コミュニカティブ・アプローチの最大の利点はこの点だといえるかも知れない。

――― なぜなら、人間は集中状態にあるときにもっとも効果的に学習ができるからである。

これは、だれもが一度は体験したことがあるはずだ。

 

このようなわけで、私は自分の授業の中でもコミュニカティブ・アプローチ的な手法を多用するが、

先にアメリカで文法の重要性が再々々々度(?)見直されているように、英語を外国語として学ぶ際には、

言葉を認識するための「補助ツール」として文法的な解説は必要だと考えている。

 

ただし、ここでいう「文法的な解説」というのは、旧来の、自動詞・他動詞や目的語、補語といった

要素還元論的な“分析文法”とは大きく異なっている。 また、認知文法とも異なっている。

 

もう一点、コミュニカティブ・アプローチと異なる点は、「母語の重視」(※)である。

 

英語を「外国語」として学ぶ際には、母語を捨象することはできない。

むしろ有効に活用する方がはるかに学習効果が上がる、というのが私の考え方である。

理由は簡単で、「母語」は私たちの思考のすべてを形作っているからである。

そうでなければ、「母語」と「外国語」をわざわざ区別して呼ぶはずがない。

 

 

(※)「母語」と「母国語」は異なる。「母国語」というのは、その人の「国籍」

との関係で規定される名称で、「母語」というのはその人の思考の基盤となっている言語を指す。

たとえば、国籍はアメリカでも、小さいころから日本で日本語の教育を受けて育ったとすると、

母国語は英語で、母語は日本語ということになる。