人間の脳の働きと言葉の学習(2)

2014年6月25日

脳の働きと言語学習

人間の脳は「人間型」の情報処理を行っており、

コンピュータは「コンピュータ型」の情報処理を行っている。

 

これまで英文法について多くの議論がなされてきたが、

結局ほとんど何も変わっていないのは、この点がよく理解されていなかったからである。

 

無理もない。

 

この情報処理、つまり並列分散処理が脚光を浴びてきたのが20世紀の末だからである(※)。

 

実際、この考え方にもとづいた文法が登場したのは、1987年で、

それは「エマージェント・グラマー」と呼ばれている。

 

いずれにせよ、「人間型」の情報処理をベースにすると、

英語の学習の仕方、教材の作り方や使い方などがまるで変わってくる。

とくに、文法に関してはまったくアプローチが違ってくる。

 

「人間型」の英語教育手法は、これまでの「コンピュータ型」のやり方よりも、

はるかに分かりやすく、身に付きやすく、効果的である。

つまり、「学習者にやさしい」。

 

興味がある人には、Inside the Neural Network Revolution (William.F.ALLMAN, Bantam)をお勧めする。

発刊は1990年だが、最も基礎的で重要な点についてわかりやすく書かれており、今でも非常に参考になる。

私に「これだ!」と言わしめた記念碑な名著である。

 

 

(※)じつは、並列分散処理の歴史は、直列処理の歴史と同じぐらい長い。

しかし、直列処理がとても単純明快で、装置も設計しやすく、

かつ実際に多くの成果を出し始めたため、こちらに研究資金が流れやすくなり、

長い間、いわば「お蔵入り」されていたのである。

近年、この情報処理が注目されはじめたのは、

皮肉にも直列処理のマシン(ノイマン型マシン)の情報処理速度が飛躍的に高まったため、

シミュレーションがしやすくなったことによる。

 

ちなみに、「並列分散処理」と「並列処理」とは、言葉がよく似ていて混同されることが多いが、

後者は直列処理を多数使用した情報処理のことで全く異なる。